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心の中を吐き捨てる場所

とある詩集を買った。

彼がお薦めしていたから。

朗読している声も素晴らしかったけど、声で感情に入ってくるのと、文字で入ってくるのとでは、また感じ方が違うから、興味が沸いた。

私が文字の世界に生きていた頃、入って来る文章に感情が支配され、苦しいことが度々あった。
それから数年経って、はっきりと「私はそうは思わない」と作者の語りかけを流せるようになった気がするから、もう1度文字に触れてみてももいいかなと思う。

まだ知らない作者が書いた本を買うときには、本編を立読みするよりも、あとがきを先に読むことにしている。

万人受けする、部数があがる、そういう内容の本はたくさんあるけれど、どこか嘘くさくて、その本に費やすお金も時間ももったいないと考えてしまう。
あとがきで少しでも興味を引く文章があれば、その作者の語りかけを素直に受け入れることができる気がするから。


「どうして、モネの絵を見ていると泣きたくなるのかな」


この一言で私は詩集を買うことに決めた。

クロード・モネの絵を見て、光が美しいとか、技法が素晴らしいではなく、泣きたくなってくる、寂しいような、悲しいような気持ちが溢れてくる感覚を、他人に言われたことなんてなかった。

教科書にも載っている有名な風景画。

それはあまりにも有名で、興味本意で見る人はたくさんいるけれど、絵の中の心情までも読み取ろうとする人は、ほとんどいない。
衝撃的な出逢いをした気分。

あとがきの他の文章も、否定されるような鋭さと、肯定し、共感してくれるような優しさ、最終的に暖かくなるような感じ。

この人が発信する言葉を大切に読んでいきたい。